MINAMI goes on
花*花ライブ


2002年08月04日 なんばHatch
〔第1部〕
1.カプチーノ(keyboards:おのまきこ,こじまいづみ)
2.赤い自転車(keyboards:おのまきこ,こじまいづみ)
3.スポットライト(grandpiano:おのまきこ,harmonica:こじまいづみ)
4.夜香梅(grandpiano:おのまきこ,keyboard:こじまいづみ)
5.アイスクリームのうた(keyboards:おのまきこ,こじまいづみ)
6.月さえも眠る夜(grandpiano:こじまいづみ,keyboard:おのまきこ)
7.Happy talk(grandpiano:おのまきこ,keyboard:こじまいづみ)

〔第2部〕
8.空の青(grandpiano:おのまきこ,こじまいづみ)
9.ベクトル(grandpiano:こじまいづみ,flute:おのまきこ)
10.真夏の果実(grandpiano:こじまいづみ,keyboard:おのまきこ)
11.Calling you(grandpiano:おのまきこ,keyboard:こじまいづみ)
12.蜩(grandpiano:こじまいづみ,keyboard:おのまきこ)
13.You've got a friend(keyboards:おのまきこ,こじまいづみ)
14.愛を少し語ろう(grandpiano:おのまきこ,harmonica:こじまいづみ)
15.おうちへ帰ろう(grandpiano:おのまきこ,ukulele:こじまいづみ)

(encore)
16.Don't worry be happy(keyboard:おのまきこ,ukulele:こじまいづみ)
17.A lot of money(keyboard:おのまきこ)
早くも夏。今年は花*花イベントへの参加率が良くない。5月のファンクラブイベントは,日にちを勘違いして申し込みに間に合わなかったり,先日行われた心斎橋でのインストアイベントも,予定が逼迫していて泣く泣く参加を諦めるということがあり(しかも,予定外のドタキャンが発生したので結果として急がなくても良かったという後日談も…非常にガックシ),残念な事が続いた。
それだけに,今日のライブには期待をしつつ会場へ。途中で本日の同行者である後輩の院生K氏と合流し,新しくできたホール「なんばHatch」へと向かう。地下道からエスカレータを上がったところで,係員に「屋外階段を上がって…」と案内される。午後4時半を過ぎてはいるが外はめちゃくちゃ暑い。
道中で,顔なじみの花*花ファングループ「現場主義」の方たちと会い御挨拶を。彼/彼女たちは,夏のイベントということで男女とも浴衣姿で来場。かなり涼しそうないでたちで風流さを感じさせた。「気分はタニマチの旦那さんですね」などと少しばかり話しをして,先に会場内に入る。
モギリの左手にグッズ販売(2001-2002ツアーのもの)も行われていた。財政健全化が進んできているので,少しばかり買い足しも可能かと思ったが,時間的にゆっくりと見ることが出来なかった。次のツアーに期待しよう。
で,重いドアを開けて中へ入る。1階はスタンディングスペースにパイプ椅子を並べた感じ。2階は座席あり? ちょうどZepp Osakaのような作りか。床に傾斜が無い分,椅子席では辛いところもあるかもしれないと思いつつ,自分の席を探す。
席番はA列21番。とうとう1列目を引き当ててしまいました。腰を下ろした感想は…「首が痛そう」と「ステージから丸見え」という感じ。目の前にスタンディング時にもたれかかるバーがあるが,これは邪魔にはならない。
しばらくして隣に「現場主義」の浴衣姿の女性2人組が座る。いつもは固まって応援をしている様子を,その少し後ろから見ているのだが,今日はバラバラのよう。ステージ上には,キーボードが2つ置かれている。が,今日はそれだけではなく,後ろの一段高くなったところにグランドピアノが鎮座。合計で3つ。どういう事をするのか興味は尽きない。
開演予定から遅れて,5時15分頃,スクリーンに今回の「MINAMI goes on」イベントに参加するアーティストの紹介映像が流れ,終るとスクリーンが巻き上げられる。だが,まだ始まらない…どうしたものか? 
結局,5時20分ぐらいにステージ下手から登場。こじまさんはジーンズ地のスカートに白いシャツ,おのさんは白黒縞のパンツにパープルのタンクトップ,腰にはカーディガンのようなものを巻き付けた衣裳。まず最初は最新シングルLONELY GIRLのカプリング曲「カプチーノ」から。かわいらしい雰囲気で始まり続いてそのまま「赤い自転車」。この曲と言えば歌詩を公演場所にちなんだ「遊びに行く場所」に変えているが,今日は「通天閣に遊びに行こう」だった。てっきり「道頓堀」か「ひっかけ橋」じゃないかとは思っていたが…DEEP SOUTHでしたか。
曲終りのMC。「こんにちは」,「暑いねぇ」という挨拶,そして,「私たちの後ろにはグランドピアノが煌々と輝いて」いることからも,おのさんが「今日は私たちの“趣味のライブ”をします」と宣言。どうやら今までにない選曲・形式でステージをこなすようだ。本人たちも「3台もあってどうやっていいかわからない」ということで,この状況を楽しんでいるような感じ。
しかも,「今日は2部構成です」,「途中でトイレ休憩があります」と,これまたいつもとは大きく違う。おのさんは「いづみちゃんの為にトイレ休憩を」などとジョークを飛ばし,こじまさんは客席を見て「(酒類を)呑んでるの?」,「いいなぁ,私も呑みながらやりたい」などと言って笑いを誘う。確かに酒呑みにとっては辛いかも? それに呑む人間としても途中で休憩を挟んで貰うと非常に助かったりも…。
おのさんがグランドピアノに向かいます。こじまさんが「春先からずっと曲作りをしてました」,「今度アルバムが出ますが,それにも入っていない出来たてホヤホヤの曲を」と紹介して「スポットライト」を唄う。まさしく「スポットライト」の照明と途中から入るこじまさんのハーモニカ(ブルースハープ?クロマティック?)が良い雰囲気ですねぇ。そして「夜香梅」,これはアルバム収録曲が続く。
「やこうばいは“夜に香る梅”と書いて…」という説明で,何故か懐メロの「夜来香」を思い出してしまった。李香蘭だったか? 梅の花はひっそりと咲いて云々という話もあったが,ここから,こじまいづみの「お酒トーク」が始まる。
どうやら,この名前がラベルに入ったお酒を作るのが夢らしい。それを聞いたおのさんは「なんや,てっきりそういう名前の“花”を作りたいのかと思ってた」と言い「それやったら自分で作ったらええねん」と反論。これに対してこじまさん「漫画の“夏子の酒”みたいに?」,「お酒を造ってるのは,神戸の灘とか?」,「まずは見学から(笑)」と,意外にも本気で考えているよう。しかも,河内長野の天野酒の永久会員になっていて,毎年新酒が届くらしい。同じ酒呑みとしては羨ましい話だ。
でもやはり夏場は酒よりもビール,そして,氷菓子らしい。おのさんも「いづみちゃんは“ガリガリくん”が好きで…」と話すと,こじまさん苦笑い。コーラ味が有るとか無いとか…一番のお勧めはソーダ味らしい。
さて,この話しの雰囲気のまま,童謡の「アイスクリームのうた」。花*花はこういう歌も唄うんですな。歌唱後に「知ってる人は手を挙げて…年配の人は別に無理しなくても」と言ってたが,誰かしらも,どこかで耳にしたことは有るとは思う。次は,6月のTHE BOOMのコンサートでオープニングアクトをしたのを御縁に…ということでカヴァー曲「月さえも眠る夜」。こじまさんはグランドピアノを弾いています。これは10年ほど前に発表された楽曲で,宮沢和史さん本人から「BOOMの歌を唄ってもいいよ」と許可を貰ったので,お2人曰く「本人から直伝を受けた歌唱」で「これからずっとライブで堂々とバンバン唄える(苦笑)」ということらしい。
そして第1部の最後となります。「私たちが花*花になる前に…」,「専門学校の発表会でオリエンタル劇場で唄った曲」,「確か19歳の時,7年前ですね」と紹介し,おのさんがグランドピアノに向かい始まります。「Happy talk」。ジャズですね。

6時頃に第1部終了。しばし休憩。旧知のファン仲間と話をする。新しいホールについての感想だが,2階席の最前列が特等席じゃないかということと,1列目ほぼ中央という最も良いと思われるロケーションにもかかわらず最大の弱点がある。それはステージ上のスピーカが邪魔でグランドピアノを弾く姿がほとんど見えないということ…などを話しているうちに第2部開始となる。

6時15分頃,拍手に迎えられて再登場。こじまさんは首周りと両袖にレースがほどこされたパープルのシャツ,おのさんは銀のアクセサリーが散りばめられた黒のTシャツに衣裳を変えています。2人してグランドピアノに向かい,何をするのかと思いきや「空の青」を連弾で演奏。気分はピアノ発表会?
曲が終ると,係員が何やら銀色に光るモノを手にステージ上に。フルート? おのさんがグランドピアノから離れ,フルートを手にセンターのマイクへと向かいます。こじまさんが「おのまきこが今からフルートを演奏します!」などと煽るので,「緊張するからやめてー」と訴えるおのさん。確かにそうでしょうな。フルートは購入して「苦節3年」の独学らしい。「何も起こりませんように」,「何かが起こっても何ともありませんように」みたいな感じで神に祈るような面持ちで演奏が始まります。アルバム収録曲「ベクトル」です。フルートの音の善し悪しは素人なのでよく判らないが,音量がピアノに負けて,ちょっと聞き取りにくかった感じがした。これは座席の位置的なことも関係するのかもしれないが。また,どうやらアルバムでもフルートの音がミックスされているらしいが,「私の演奏じゃない」(おのまきこ談)らしいです。
演奏後,フルートというか横笛の話となり,「誰やったかな? 芸人さんで笛吹いて蛇が出てきて…」と,こじまさんが尋ねると,客席から「東京コミックショー」,「2人組」などの声が飛ぶ。それを聞いて一応は納得したものの,スタッフの間では誰も知らないようなので,それが「本当に本当なのか」さらなる疑問が生まれてしまったこじまさんであった。
その後,アルバムと10月に大阪でライブがあることを紹介。「どこかのwebサイトには“トマトとクローバー”ってあったけど,本当は“リンゴとクローバー”というタイトルです」,また,ライブツアーもあり,今回も年をまたいであちこちに行くらしいとのこと。「じゃあ,そこでまたフルート演奏を」という話も出たが,本当に?
秋以降の話はさておき,今年の夏は何故か海での仕事が多い。確かに関東方面でビーチでのイベントライブなどがいくつかスケジュールにあった。そこで,夏と言えば,海と言えばこの曲を。サザンオールスターズのカヴァー「真夏の果実」。
それが終って,おのさんがキーボードに向かい,そこで2人が目を合わせてしばしの沈黙が…こじまさんが次にグランドピアノを弾くことを忘れていたらしい。「行ったり来たりで大変や」,「しかも少し高くなってて怖い」というこじまさんに,おのさん「前だけ向いてたら大丈夫」。唄うは「Calling you」。映画「バグダットカフェ」の主題歌ですな。
今回のライブが5月から6月にかけて決まった時,「別にバンドさんと仲が悪くなって,人が離れてしまったわけではないです」と冗談を言いつつ,「一度原点に戻ってみよう」ということで,バンド編成ではなく2人だけでのステージということにしたらしい。そして,9月にリリースされる新アルバムも,「前作spiceの時は,色々な音を足していって作り上げたが,今度はピアノの音と歌声を中心に」したそうな。
そのアルバムに入ってる曲で,これが読み難い漢字のものがありますと紹介して「蜩(ヒグラシ)」を唄う。「誰もいないアスファルトの上にこそ,何かがあるような感じ」という思いがあり,おどろおどろしい曲調に仕上がったと説明。また,スタッフはこの漢字が読めなくて「タイって何?」などとも言われたらしい。「タイは魚編に周,ヒグラシは虫編に周」と客席に向かって漢字の説明もします。あと,「演歌の長山洋子さんも同じタイトルの持ち歌がある」と,こじまさんが言うと,おのさんも「じゃあ,次のツアーで披露して」などと輪をかける。それを聞いたこじまさん「じゃあ,着物の下に洋服を重ね着して…大変や!」と返事。個人的には「演歌を歌う,こじまいづみ」が見たいとかねがね思っていたので,是非とも実現をお願いしたいところだったりします。
ステージ上にはギターの道祖淳平さんが出てくる。「お友達のみんなのために」という言葉とともに唄うは「You've got a friend」。洋楽のカヴァーの時は,自分でどれだけ歌詩が聞き取れるかチャレンジするが,ごくごく一部分でなんとなく理解できるところもあるが,全体を通すと何が何やらという状況。
「最後の2曲になりました」と話すと,観客からは残念の声が挙がる。おのさんがグランドピアノに向かう。唄う前にこじまさんからの釈明が…「この歌は京都の七条大橋で作ったと言ってましたが,実はそのひとつ北にある名前も無い小さな橋で…」。実際には名前が無いことは無いと思うが,あまりメジャーでない橋なんでしょう。で,その歌は「愛を少し語ろう」です。これがなかなか良い歌で,歌詩の情景が鮮やかに浮かんできます。ちなみにPVも東京の下町・臨海部で撮影され,レトロとポストモダンの景観が入り交じり,あらゆる分野での地理的想像力がかき立てられる作りになってたりします。で,今日のステージでも1番目は,こじまさんが客席に語りかけるように優しく唄いあげ,2番目からはそこにハーモニカとギターが加わり,歌詩に力を与えたような格好に。ええ感じ。
そして,最後の曲は,こじまさんがウクレレを片手にセンターのマイクの前へ。どうやら,このウクレレ演奏が「本日のメイン」らしい(こじまいづみ談)。椅子に座りウクレレチェック。道祖さんのO.K.が出たところで唄います「おうちへ帰ろう」。この歌,最後は「Country road」になっていたが,アルバムでもこういう形なんだろうか?時刻は午後7時過ぎ。ひとまず予定終了。客席からはアンコールの声が挙がる。

しばらく経って,再登場。客席からは喜びの拍手。ステージ上には2人分のマイクが置かれている。そこで,こじまさんが語ります。「Don't worry be happyという言葉」,「幸福を恐れるなという意味」,「幸福な時はそれが壊れるのが一番恐い」,「だから,それを恐れて幸福になることを避ける…」云々と言ったことを。それを前振りにして唄うは「Don't worry be happy」。こじまさんはウクレレを手にして弾いています。ステージにはギターの道祖さんも。また,途中で「uh〜uh〜」という場面があり,そこを一緒に「恥ずかしがらずに唄おうよ」と客席に投げかける。最初は声は小さかったが,こじまさんに何度も煽られたこともありだんだんと声も大きく。それでもなお「まだまだ」とこじまさんが煽るので,おのさんは「まだやるの?」といった表情を見せる。途中で「スタッフのみんなだけで唄ってみよう」ということで,ステージ袖から歌声が聞こえてきたが,お2人曰く「音楽関係者なのに…」,「これはダメな見本ですね」と,イマイチだったようだ。
一通り客席を盛り上げた後,「お札が変わりますね」,「樋口一葉を“かずは”と読んでしまった人もいたり…」と,何やら「お金」にまつわる話が。これだけでコアなファンは大喜び。何をやろうとするのか判っています。アレですね,アレ。
「A lot of money」です。客席は立ち上がり,総スタンディング状態。ここだけが雰囲気がちがうといったような感じ。いやぁ楽しい。

全てが終ったのは19時20分過ぎだったか。時折ある「2回目のアンコール」もなく,本日の予定は無事に終了。感想はと言えば,最前列で「かぶりつき」状態で見られたのは嬉しいが,何やらステージからも見られているような気がして(自意識過剰だろうけど)なんか落ち着かなかったということ。その割にグランドピアノを弾く姿がスピーカの死角になって見られなく残念だったこと。何よりも,いつもと違う選曲はとても新鮮で,改めて花*花の芸域の広さを知ったこと…ということだ。
しかし,3点目については,同行者が「今日は趣味でやる…それはプロとして金払ってきている客に対してどうかとも思う」と指摘していた。確かに初めて花*花を見る人,特にヒット曲しか知らない人にとっては,「何だったんだ?」,「花*花ってどんな歌を唄っているのかよくわからない」という思いが残ったのかもしれない。この状況を逆に言えば,いわゆる「一見さん」と「コアなファン」が対等な立場で臨むことが出来たということにもなるが。ま,同行者も,こじまいづみが気になって仕方がなかったようで,ひとまずファン拡大の観点からは大成功だったんじゃないかと。


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